内容証明郵便を出すべき場合
法律上、必ず内容証明郵便にしなければならない場合はありませんが、トラブル等を避けるため、内容証明郵便にした方が良い場合があります。
内容証明郵便の効果・効力を生かす場合のうち、特に重要な場合と言えるでしょう。
主な例としては
○契約の解除
通常、契約を一方的に解除することは許されません。一度交わした約束を一方的に破るということはできないのです。しかし、相手の
故意または過失により債務不履行になった場合などは、法律上当然に契約を解除できる場合といえます。この場合は、当事者の一方的
な意思表示により契約を解除することができますし、口頭でも普通の手紙でも構いません。
しかしそれでは証拠が残りません。事後のトラブルとならないよう契約の解除のような重要事項は、証拠を残すべきでしょう。
○クーリング・オフ
クーリング・オフをするためには、契約申込時等に渡される法定の書面を受け取ってから、8日
以内に書面(8日以内に発信)で通知しなければなりません。
内容証明郵便は、「書面で通知」に合致しますし、「8日以内に通知(発信)」ということの証明にも適しています。
○債権譲渡の通知
債権の譲渡は、債権の譲渡人と譲受人の間で交わされる債権譲渡契約により成立し、債務者の承諾は不要です。しかし、債権譲渡を債
務者が知らなければ、問題が発生する恐れがあります。
問題の発生を防ぐためにも、債権譲渡は債務者へ知らせなければならないこととなっています。
民法においても、債権の譲渡人から債務者への通知又は、債務者の承諾があることが、債権譲渡における債務者への対抗要件となって
います。
また、二重譲渡の譲受人などの第三者に対しては、その通知または承諾が確定日付ある証書によるもの、が対抗要件となっています。
ですので、債権譲渡の通知をする場合は、第三者への対抗要件を満たすため、確定日付を得られる内容証明郵便にすべきでしょう。
○債権を放棄するとき
業者同士の取引で相手方が倒産して売掛金が回収できないことがあります。そのままにしておくと帳簿上その債権は資産として計上さ
れているので税務上損をします。
回収不能な債権を持っていてもしょうがないので、その売掛金の債権を放棄することで、放棄した金額を損金として処理することが出
来ます。
税務対策として、債務者に対して債権を放棄しますという通知する場合には、必ず「内容証明郵便」にして証拠を残しておきます。
こうしておくと、後日税務署から債権放棄の証拠の提出を求められたら、内容証明郵便の債権放棄通知書を提出すれば良いです。
内容証明郵便を出さない方が良い場合
内容証明は、証拠を残すためや相手に心理的圧迫を与える場合に使われますが、それが必ずしも自分にとって利益とならない場合があります。
主な例としては
○相手を怒らせたくない場合、今後も付き合いを続ける相手の場合
内容証明郵便には、宣戦布告的意味もあります。普通郵便と違って自分の強い決意や意思を相手に示すことになります。自分にそのよ
うな考えがなくても、受け取った相手がそのように感じることは多いでしょう。そのため、相手によっては感情を害し、問題が悪化し
てしまう可能性もあります。
ですから相手によっては、内容証明郵便を出さない方が良いこともあります。
例えば・・・。
□話し合いで解決できそうな場合
□誠意のあると思われる相手
□親戚・友人・知人など近しい相手
□会社関係の人(取引先等を含む)、学校や近所の人
○相手に証拠を渡したくない場合
内容証明郵便は、証拠を残すためというのが本来の目的ですが、自らの証拠となるということは、相手の証拠にもなり得るということ
です。
また、内容証明郵便といえども自分にとって不利益となることは書かないことです。自分にとって不利益な内容は、相手にとって証拠
となる恐れがありますので。
○相手が倒産・破産・夜逃げなどをしそうな場合
このようなときに内容証明郵便を送っても、効果は期待できません。財産を隠されたりする恐れもあります。このような場合は、内容
証明郵便ではなく、仮差押え、訴訟などの強硬手段をとることをお薦めいたします。
○手形が不渡りのとき
手形が不渡りになると、内容証明郵便を出したところで、殆ど効果ありません。振出人が手形を不渡りにするのは、倒産を覚悟したか
らです。
そのような人物に内容証明郵便を出したところで、支払われることはほとんどありません。
振出人が契約不履行等の資金不足以外で不渡りにした場合は、手形交換所に供託金を入れてますから、すぐにこの供託金を仮差押えす
る必要があります。