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遺産分割協議

 遺言書がない場合、民法は、法定相続人と法定相続割合について定めていますが、あくまでも目安としての割合に過ぎず、具体的な財産をだれがどのように相続するかは、相続人全員による「遺産分割協議」によりできると定めています。

 法定相続分と異なる遺産相続をするためには、遺産分割協議及び遺産分割協議書の作成が必要となります。他にも以下のような理由により遺産分割協議書が必要となってきます。ただし、遺産分割協議書は絶対に必要なものではありません。

【遺産分割協議書の作成理由】

 ①相続人全員での協議の成立を証明し、後日の紛争を防止するため

 ②登記手続きの登記原因証明情報とするため

 ③預貯金を相続した場合の払い戻しのため

 ④相続税の申告のため

☆遺産分割協議の前に!

 相続手順1及び相続手順2でご説明した、「相続人調査・確定」「相続財産調査・確定」を終了させておくことが必要となります。

 相続人調査・確定は、遺産分割協議は相続人全員が協議に参加し、合意することが必要なため、相続人を1人でも欠くと協議は無効となります。また、相続財産調査・確定を行い、相続財産の範囲と評価額を明確にしておかなければ、遺産分割協議を行うことができません。

 また、相続人の中に次のような方がいる場合は、協議の前に手続きをする必要がありますのでご注意ください。

未成年の子どもとその親が同時に相続人となる場合

認知症の方がいる場合

行方不明の方がいる場合​

遺産分割協議の方法

 

1 相続人全員の出席のもとで協議を行う

 相続人全員の出席のもと、誰が、どの財産を相続するのかを決めていきます。民法906条は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、相続人の年齢、職業、心身状態、生活状況その他一切の事情を考慮してこれを定めるとしており、抽象的基準規程となっています。

 相続人の一部のみで行った協議は無効となりますので、ご注意ください。

 ただし、相続人全員が一堂に会すことが不可能な場合、書面の持ち回りによる遺産分割協議も判例により認められています。

2 参加者全員が合意に達したら遺産分割協議書を作成する

 遺産分割協議書には、定められた様式等はありませんが、誰が、どの財産を相続するのかはっきりとわかるよう記載し、相続人全員が署名・実印を押印して印鑑証明書を添付します。こうしておかないと、その後の名義変更手続き等で、思わぬ遅滞が発生する恐れがあります。

遺産分割の方法

 遺産分割と言っても様々な方法があります。

1 現物分割

 遺産分割の原則的方法です。この土地と建物は妻に、預貯金は長男に、有価証券は長女になどと、具体的に決めていく方法です。

 この方法で定めることができるならば何の問題もありませんが、割合どおりに遺産割り当てを行うことは非常に大変です。

 主な財産が自宅(土地を含む)のみ、といったケースでは、現実に家を分割することは不可能ですね。そのような場合は、代償分割や換価分割といった方法があり、現実的にはこれらの方法が多く用いられています。

2 代償分割

 1人又は一部の相続人がある不動産を相続する代わりに、自らが他の相続人の相続分の代償となる金銭を支払う方法です。

 しかしこの方法の場合、代償金を支払う相続人が支払うだけの現金などを持っている必要があります。これは現実的に困難な場合も多いです。

3 換価分割

 不動産などの相続財産を売却して、売却金を相続人で分配(分割)する方法です。この方法ですと、各相続人が十分な手持ち現金がなかったとしても、売却金で分配できるので問題は少ないはずです。

 しかしこの方法で不動産の売却を行うと、生家や思い出の品を失うことになったり、不動産売却益に対し課税されたり、売却予定の不動産に買い手がつかず長期間売却できなかったりといった可能性があります。

 この方法が絶対!、という方法はありませんが、それぞれの事情に応じて検討しなければなりません。

特別受益と寄与分

○特別受益とは

 民法903条に定められている特別受益とは次のようなものをいいます。

 ●遺贈(遺言によって受ける贈与全て)

 ●婚姻若しくは養子縁組のための贈与(新居費用、結納金、新婚旅行費用等)

 ●生計の資本としての贈与(学費、住宅取得費用、事業資金等)

 被相続人よりこれら生前贈与を受けている相続人は、特別受益として相続分から差し引かれることがあります。

 生前贈与を受けている相続人と、受けていない相続人の相続分が全く等しいとなれば、不公平と考える人もいることでしょうから。

○寄与分

 民法904条の2に定められている寄与分とは

 ●被相続人の事業に関する労務提供又は財産上の給付

 ●被相続人の療養看護

 ●その他の方法

 により、被相続人の財産の維持又は増加ついて特別の寄与をした者があるときは、寄与分は遺産分割対象となる相続財産には含まれず、寄与した相続人は相続財産からまず寄与分を取得し、残った部分を法定相続で分割することとなります。

 寄与分がいくらである、といったことは被相続人にしかわからないことです。他の相続人からみれば寄与とは思えないものもあるでしょう。それらを考慮し、寄与分がいくらくらいになるのかということは、相続人全員の協議により決めることとなります。どうしても協議が成立しない場合は、家庭裁判所へ寄与分を定める審判を申立て、その審判により定めることとなります。

最後に・・・。

 遺産分割で親族の絆を壊してしまうことがあっては悲しいことです。

 不動産やその他の動産など分割できないものほど価値のある遺産だったりする場合が多く、遺産分割が法定相続分どおりにきちんと分けられることは少ないでしょう。

 相続で得る財産は、「もともとなかったものなんだから」、くらいの気持ちを持つことも大切だと思います。

​ そういう気持ちを持つと、ある程度の妥協や譲り合いができるものです。

お問合せはこちらから

遺産分割協議には定められた方法があります。その方法に沿っていないとせっかくの遺産分割協議が無効となります。

また、遺産分割協議書もしっかりと作成しなければ、不動産の名義変更などの場合に使用できない場合もあります。

​弊事務所にご依頼くだされば、無効にならない遺産分割協議やしっかりとした遺産分割協議書の作成をお手伝いします。

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